エロゲ開発者の苦悩コラム 第1回 『制作の苦悩』

【書いた人】 宅本 うと
2022.08.05

はじめに

皆様こんにちは、宅本うとです。

私はエロゲ制作者です。脳内妄想をカタチにするという点で考えると創作活動をして生きていると言っていいと思います。
エロゲはいつも企画を作る事から始まります。
が、決してニヤニヤしながらエロい事を考えながら企画を固めているという事はなく
あくまで商業なので受け手のニーズであったりとかビジネスベースで企画を考えていきます。
そのなかで自分がやりたい事や、やってみたい事をアイデアとして取り込み柱にしていきます。
制作者のなかでイメージが出来ない企画は、どんなに売れ線なものでもうまくは行かず、
普通の制作物より2次元フェチが強いエロゲという媒体においては受け手に薄っぺらい印象を与えマイナスにすらなり得ます。
結局は自分に出来るものしかできないんですよね……。

だからこそ、企画は何でもOKなわけではない。

じゃあ、イメージ通りなものを作った方がいいと考え既存ユーザーの意見を拾っていくと
「おかわりが欲しい!」
という意見が大半になってきます。
それならその声に従っておかわりを作って行こうとすると、今度は
「お腹いっぱい。飽きた」
になって終了してしまいます。
これも仕方の無い事で、大好きな味でも沢山食べるためにはちょっとした味変は必要になるんですよね。

故に企画の理想は「既存ユーザーにおかわりを与えつつも新しい発展性を持つもの」という、なかなかに無茶なものになってきます。
そしてこれは1回クリアすると、次回はそれをベースにしないといけなくなるのでどんどん難易度があがる厄介なものです。
それに伴い予算や時間も掛かってくるので、ミスった瞬間会社が吹っ飛ぶ爆弾にもなり得るのです。
エロゲ制作は原画押しやライター押しなど個人名を前に出していくと、それに伴い個人負担も増えていくので一点押しすると怪我や病気、あるいは精神に限界が来たりすると多方面に誘爆破裂し阿鼻叫喚えらいこっちゃのリスクも負う事になります。

売れるために皆頑張るのだけど、売れた後が一番怖いというジレンマ……。
続ける事はそれ自体が難しく、それが出来ているメーカーさんには色々な工夫が陰に存在していると思います。

HOOKSOFTは20年以上続いているブランドでもあり、だからこそ構築されたイメージというものがあります。
このイメージも、とても有り難くて大切な一面と、固定化された呪いのような一面を持ち合わせます。
皆さんも使ったりしてませんか?
「HOOKぽい」「HOOKぽくないとか。これはSMEEやASaProjectにも言える事ですが。

これの何が怖いかと言うと、明確に定義づけされないふんわりとしていながらも確かにある固定概念なところです。
Aさんが言う「HOOKぽい」と、Bさんが言う「HOOKぽい」は必ずしも同じ事を指してはいないのです。
でも表面上は通じているので、その事実に気付き難いという……。

受け手の皆さんが使う分には全然好きにして構わないのですが、私達制作の仕事は、0を1にする事です。
そしてそれを集団で行うため、ふんわりした言葉は意思疎通の妨げにもなってきます。
なので「●●ぽい」という言葉を便利ワードとして使う事はNGであり、使う際には
何を持って「●●ぽい」と言うのか。そこに何を求めているのかの言語化を加える必要があり、
言語化が出来ないのならそれは取り入れてはいけないものだと感じてます(個人意見)

同じような単語として「萌え」があります。
「ちょっとこのシーン、ヒロインに萌えるリアクションさせておいて」とか言うのは簡単ですが
それが萌えるか萌えないかなんて人それぞれです。
「いやー、これは萌えないよ」とか言われても困ります。提出した側は萌えると思って提出しているので。
なので、企画や仕様は言葉の定義はしっかりしておくに越した事はないのです。

どうですか?パッと書いただけでも結構堅苦しいのが分かっていただけますか?
要点はまだまだ沢山あるのですが(純愛ゲームの定義付けとかなんやら)、このように色々な事を考えて企画をまとめていっております。
今はやり方を変えておりますが、一時期のHOOKSOFTは企画通るまで数ヶ月皆で頭を悩ませたりしてたくらいです。

この結果出来上がったものが既存タイトルになりますので、弊社製品ページを見てどんなやり取りの末なのかを
想像してみるのも面白いかもしれません。
●製品ページ↓
https://www.hook-net.jp/htm/product.htm

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