エロゲ開発者の苦悩コラム 第2回 『Hシーンの苦悩』

【書いた人】 宅本 うと
2022.09.02

エロい、て何だろう??

なんか哲学的ですが、そこまで深い話ではなくどちらかと言うと性癖の幅広さに頭を抱える方向です。
前回のコラムでもちょっと触れた「萌え」と同じように、エロいと感じるかどうかも人それぞれなんですよね。

そのなかで、エロゲに何を求めているかによっても変わっていきます。
でも、エロゲなのでエロ(ここではHシーン)はあった方がいいし大事にして欲しい。というのがユーザーの本音だと思ってます。

だからこそそこは抑えていきたいところなのですが、ここに純愛ジャンルの場合複雑なポイントが出てきます。

「Hシーンは案外何やってもいいわけではない」

基本的に、Hって男性上位なんですよね。そのテイストを強くするとエロくなりやすくはあります。
だからといってそっち方向に舵を切ると、俗に言う「ベッドヤクザ」になりがちです。
これは、純愛ゲームの主人公が受け身的だったりする分Hシーンとのギャップが強くなるためです。
プラス、それまで優しく愛を語っていたのにベッドインと共にケダモノ化した様に感じてしまい
主人公のヒロインに対する愛情に疑いの目を向ける事になります。

昔は「Hシーンは別物!」くらいの認識でしたが、正に「ベッドヤクザ」という言葉が出て来てからこの言い訳が聞かなくなってきた印象です。

なので、主人公の性格を歪めず描く方向にしていくと初々しさとかリアリティを大事にする方向に行くのですが、まあぶっちゃけ

地味過ぎてヌけない。

ゲームのスペックは限られているので、貴重な1枠を「なんかうまくいかなかったね……」みたいなもので埋めて欲しくはないものです。
やっぱり最初から、恥じらいながらもしっかり喘いで最後までいって欲しい。
リアルなんてどうでもいい!創作なんだから、処女の床上手という理想をそのまま体現すりゃええねん!
ゴムはNGです。射精はしっかり演出しないとだし、中に出したい派も外に出したい派も満足出来るようにしないと。創作なんだから!

……ほら、段々何言ってるかわからなくなってきた。

純愛ゲームにおけるHシーンは、リアルとファンタジー(嘘)を混ぜ込んでいく必要がありますが
この境目がユーザーによってバラバラなのです。
とどのつまり、その人の性癖スイッチが入るかどうか。
スイッチが入れば、どんなに中身をぶっ壊しても成立する事になってしまいます。これが出来れば凄くラク。

ですが、今どきの性癖はあまりにも細かすぎてまとめる事なんてできません。
誰かの性癖を強くヒットさせようとすると、そうで無い人の不満を招きます。

ましては純愛ゲームの場合、プレイヤーはヒロインに愛着を持っていくので
そのヒロインのHシーンが自分の性癖にそぐわないときは哀しいものです。
ヒロインと性癖は両方合わせるのが吉である。
結果、なるべく万人向けに抑える方向に行きがちで、よくわからないところに行き着く事になります。

こうなってくると「作り手が良いと思えるものを追求すればいいのでは?」と思うのですが
私の場合、性癖が歪みまくりでマイノリティーが酷い自覚があるので却下します。

例えば、私は実はフェラシーンが苦手です。(好きな人ホントごめんなさい!)
理由としては、気持ちよさよりも大事なムスコが噛みちぎられるかもしれない不安の方が強いからです。
純愛ゲーで噛みちぎられるわけないじゃん!と思っていても、なんかドキドキしてしまいます。

故に、私にとってのフェラシーンは
「この人は噛みちぎらない人なんだ!いや、噛みちぎられたとしても構わないと思える人なんだ!」
みたいな、主人公のヒロインに対する信頼感や覚悟を感じるシーンになってしまいます。
なのでもし私がガチでここを演出するなら

感動的な挿入歌をぶっこむかも。

そして、心の繋がりを感じつつ泣きシコ。

私は髪フェチでもあるのですが、SMEEで『フレラバ』を制作時にライターの早瀬君から
「岬のHシーン、宅本さんの髪フェチの理想的なHシーンにするんで言って下さい」
と言って頂いたので私の要望を出しました。

「髪コキが欲しいのだけど、コイル巻きみたいにグルグルしないで欲しい。髪を痛めるだけなんで。
優しくそっと愚息を包んで欲しい。神聖な髪の毛に自分の一番汚いものを包んでくれる優しさに感謝と罪悪感の射精をしたい。髪にぶっかけたいのでヒロインには後ろを向いていて欲しい。顔にかけたくはない。射精した後は風呂場に行って髪の毛を洗いたい。すっごく丁寧に洗って、ドライヤーなどで乾かして元の艷やかな髪に戻すまでがセットです」

早瀬君からは「ヒロインに対する愛情を全く感じなくて怖い」と言われたので、もう少し共感性があるレベルに落としてまとめていきました。
それで出来上がったものが岬ルートのワンシーンです。Hシーンだけでは整合性が取れなかったので1ファイル丸々使ってまとめました。

そう、Hシーンも共感性が大事なんです。

尖りすぎた性癖は凶器(狂気)にしかならぬ。

『同棲ラブラブル』のときにも、Hシーンでヒロインの絶頂時に瞳のハイライトを抜く演出を入れました。
ヒロインの気持ち良さを言葉でなくグラフィックで表現した方が本当なんだと感じれるからやったのですが(イった後の焦点が定まらない感じとか)概ね不評でした
「レイプ目」という単語のせいなのか分かりませんが、ヒロインに対する愛情を感じないから
受け入れ難いという事でした(凌辱しているみたいで萎える)。

あくまで純愛ゲームのHシーンは互いの愛情表現として存在しているから、そこをはみ出さないレベルでエロく。

すっごく曖昧。そんなん仕様に組み込めません。

グラフィックに関しても、キャラゲーの場合は立ち絵をベースにして仕様を固めていくのですが
立ち絵を可愛く仕立てて同じ仕様で作業をするとHCGが薄くなります
逆にHCGに合わせて立ち絵を作るとキャラ性が薄くなります。
「可愛さ」と「エロさ」は違うベクトルへ向かっているので、両方成り立つようバランスを取る必要があるのも難しいところです。
(グラフィックの仕様も複雑化してしまうと大量生産が不可能になりますので、仕組みが分かれば誰でも出来るようにするのが理想とされます)

なので現状は差分を多く用意して射精位置を選んで貰えるようにしたり、『放課後シンデレラ』のように脱衣or着衣を選べるようにしたりして少しでも幅広い性癖の方に受け入れて貰えるようにする方向にしております。

理想は全部盛りなのですが、グラフィックの差分がとんでもない事になるのでこれも現実的ではなかったりします。
(好きなヒロインを、好きな服装で、好きな前戯で、好きな体位で道具の有無含め個々の性癖に合わせて遊べるのが理想かなと)

回数に関しても、数が多ければいいものでもないですし考える事も多いです。

ここらはこれからも悩みつつ、色々と模索していきます。

そういえば、最近は破瓜表現を嫌がる方も増えている印象です。
痛々しくて萎える、というのが主な理由です。
昔は必ず入れるようにはしてましたが、最近は都度話し合って選択する流れになってきてます。
これも時代の流れですね……。

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